トランプ氏は意図的にデフォルトも?米ドル相場の行方は? 2016/11/14



 先週の米国大統領選挙の結果を受けて、米国株は上昇、日本株は一旦大きく下落するも値を戻し、米ドル対円相場は9日の東京時間に101円台に達するなど円高が進みましたが、翌日には105円台に戻りました。一方、米国金利は長期ゾーンを中心に上昇しました。米ドル対円相場の今後の見通しについては、日米金利差の拡大から円安に向かうという市場関係者のコメントも見受けられます。

 そこで本稿では米国金利と米ドル対円相場に注目し、日米金利差の拡大が米ドル対円相場にどれほどの影響を過去にもたらしてきたかを再検証するとともに、今後の米ドル対円相場について想定されるシナリオと銘柄例を紹介しています。

■大統領選挙の結果を受けて長期金利が上昇

 図1は日米のイールドカーブ(年限の異なる国債の利回りを線で結んだもの)の変化を、米国大統領選挙日の2016年11月8日と選挙結果が判明した翌9日で比較したものです。日本のイールドカーブはほとんど変化がなかったのに対して、米国のイールドカーブは長期ゾーンを中心に上昇していたことが分かります。

 利回りの上昇は債券価格の下落と表裏一体の関係になっていますので、トランプ氏の当選で米国債が、長期債を中心に売られたことを意味しています。この背景として考えられるのは、トランプ氏の大統領就任後、積極的な財政拡大と減税を実施することが予想されており、国債投資家が米国の財政悪化を懸念したかもしれません。また、金融政策について政策金利の引き上げに積極的な姿勢を示していた点も国債投資家にとっては悪材料です。さらに、2015年に米国が債務不履行(デフォルト)するかもしれない、という債務上限問題が発生しましたが、当時は債務上限の引き上げを盛り込んだ予算法案が可決されました。その際に決めた期限が2017年3月までとされており、トランプ大統領下でこの問題が再燃することも懸念材料といえるでしょう。

図1:米国大統領選挙後のイールドカーブの変化

■日米金利差は為替相場に影響するか

 為替相場においては一般的に日米の金利差拡大は円安米ドル高の要因となりうる、といわれますが、過去の日米金利差拡大局面では米ドル対円相場がどのようになっていたかを確認しておきましょう。内外金利差の代替指標として、図2は2007年からの日米10年国債の利回りの差を示したものです(2016年11月第2週は10日までのデータ)。日米ともに利回りは低下傾向が続いていますが、2013年以降は日本の量的緩和政策によって日米の利回りの差は拡大し、その後は横ばい傾向が続いています。

図2:日米10年国債利回りの差の推移

 図3は図2の利回りの差の拡大局面と米ドル対円相場の推移を重ねたものです(2016年11月第2週は10日までのデータ)。数週間単位の短期的なサイクルでは、利回りの差の拡大局面に円安・米ドル高が進行しているように見えますが、年単位の長期的なサイクル、例えば2007年から2012年にかけては、利回りの差の拡大局面がいくつもありましたが円高・米ドル安の長期的なトレンドに変化はありません。

図3:日米10年国債利回りの差と米ドル対円相場の推移

■金利を巡る今後のシナリオ

 以上のことから米国の長期ゾーンの利回り上昇が続く場合、数週間単位では円安・米ドル高が進行する可能性がありますが、長期的なトレンドとは無関係かもしれません。トランプ氏が財政出動と減税に踏み切れば財政健全化が遠のくとして米国債が売られ、利回りの上昇が続く可能性があるでしょう。経済成長が見込める環境下では米国債を売って株式を買うという投資行動が見られ、米ドルの上昇も期待できますが、米国債を売る理由が財政問題である場合には米ドルは売られる可能性があります。

 さらにトランプ氏のTPPを承認しないというスタンスも長期的な為替相場に影響を及ぼすかもしれません。日本にとってTPP承認のメリットの一つは輸入品が安くなることで、国民の可処分所得が実質的に上昇するという点です。これはデフレ政策といえます。米国はTPPを承認せず、さらに輸入関税を引き上げる可能性があり、これは輸入物価の上昇を伴うことからインフレ政策といえます。日本ではTPPを承認する流れなので、米国ではインフレ、日本ではデフレとなる可能性があります。長期的にインフレは通貨安を招くと考えられ、円高米ドル安として効いてくるかもしれません。

 目先では来年再燃すると見られる債務上限問題で米国債が売られる状況となると、米ドルを売却して安全資産として日本円を買う動きを伴うかもしれません。加えて、米国債を多く保有している中国や日本との関係において、トランプ氏が中国と日本を敵視する状況が発生すると、トランプ氏が意図的に債務不履行(デフォルト)を引き起こすリスクも少なからずあると考えられ、長期的な視点で米ドル高を期待するのは難しいかもしれません。

 今後の米ドル対円相場の予想と銘柄例は次の通りです。


2017年1月にトランプ氏が大統領に就任するまで
 相場観:金利差拡大が拡大し、円安ドル高が短期的に進む。
 銘柄選定:レバレッジは控えめの銘柄で1~2カ月程度保有。
 銘柄例:
2017年1月以降
 相場観:2017年3月15日前に債務上限問題が再燃し、円高ドル安が短期的に急速に進む。
 銘柄選定:レバレッジが高めの銘柄を3月上旬に仕込み、3月14日に売却する。
 銘柄例:

※銘柄例は買付時の米ドル対円相場が105円前後であった場合です。短期的な変動を狙う場合は権利行使価格が買付時の相場水準に近い銘柄を選ぶのがポイントです。

(eワラント証券 投資情報室長 小野田 慎)
※本稿は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。本稿の内容は将来の投資成果を保証するものではありません。投資判断は自己責任でお願いします。