電力・ガス自由化の行方 2016/04/13



 今年4月から電力小売が自由化され、街中で積極的な勧誘を目にするようになりました。また来年4月には都市ガス小売も自由化される予定です。今後どういう展開を見せるかは消費者としてだけでなく、投資の観点からも要注目です。ちなみに、米国カリフォルニアのゴールドラッシュでは、競争激化で金鉱堀に明け暮れる山師の儲けは少なく、彼らにスコップやジーンズを売る業者が財をなしたとか…。

 日本の規制業種で似たような自由化事例と言えば、30年前の固定電話の自由化が挙げられます。それ以前は、国内電話は電電公社、国際電話はKDD(国際電信電話株式会社)による独占で、長距離電話は東京・大阪間で3分間400円もかかっていました。ところが、1985年以降の一連の自由化で、電電公社はNTTとなり民営化、長距離電話には第二電電(DDI)や日本テレコムなど、地域系では東京電力系の東京電話などが算入し、電話料金は目に見えて低下しました。
 投資対象としてはNTT株の売り出しで購入した投資家は、初回売り出し直後を除けば押しなべて損失を蒙る結果となりました。その後、業者間の競争激化で淘汰が進むとともに、携帯電話市場の急拡大で、今や固定電話を持たない世帯が増えているのも企業のライフサイクルを実感させます。

 翻って電力と都市ガスですが、電力小売には火力発電の燃料となりうる液化天然ガスと燃料電池の普及を狙う都市ガス各社、ガス小売にはこれも発電用に液化天然ガス施設を保有する電力会社が強敵となることは必至の様相です。さらに、どちらにも算入できる石油元売業者が価格面でも規模の経済でも競争力を持ちそうです。加えて、太陽電池パネルの価格低下、電気の備蓄を可能にする高性能電池の価格性能比向上、電気料金のアップにつながる原油価格の急騰などがあれば、再生可能エネルギー陣営が勢いを盛り返す可能性もあります。これらを考慮すると、固定電話料金の自由化よりも消費者メリットと既存の電力会社・ガス会社のデメリットは大きそうです。一方、携帯電話大手3社のように、国際的に高い通話料金や消費者に厳しい2年縛り慣行、他社がやれば瞬時にまねる学生向けの各種割引など、カルテルを組んでいるかのような横一線の協調的な市場になれば、新規参入業者はなかなか大手の牙城を崩すことはできないでしょう。

 前者のシナリオ(競争激化)なら、電力やガス供給業者そのものよりも周辺産業、具体的にはスマートメーターやガスタービン発電機、コールセンター人員の教育・派遣あたりの方が投資妙味がありそうです。他方、後者のシナリオのように既存勢力が善戦するなら、かなり売り込まれている電力会社数銘柄への分散投資が意外な好パフォーマンスとなるかもしれません。

(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)
eワラント証券 チーフ・オペレーティング・オフィサー 土居雅紹(どい まさつぐ)