注意喚起…だけ? 2016/08/17



 「中国は本気で尖閣諸島を奪取するつもりだ。サラミ戦術でジワジワ攻めてくるの気をつけろ」
 「米国の低格付け自動車ローン債権は危険水準にある」
 「イタリアの金融機関の不良債権は自主再建不能かも」

 巷のマスコミ、識者、評論家は様々な事象について見解を述べ、「注意喚起」をしてくれます。それはそれでありがたいのですが、ちょっと物足りなく思われるのは、「それでどうしたらいいの?」という肝心なところまで示してくれることがほとんどないことです。たまに日本政府に向けたかのような上から目線の「日本はこうすべきだ」的なものはあるのですが、企業や個人レベルではまず役に立ちません。

 市場には常に多くの懸念材料があります。もし「ない」と感じられるなら、それは慢心か幻想に過ぎないことがほとんどで、相場の天井圏であることのシグナルとも言えます。現時点で思いつくだけでも、米国ジャンク債権バブル崩壊、トランプ大統領誕生、米国利上げ再開、中国の人民元再切り下げ、ウイグルやチベットでの大規模暴動、中国企業の不良債権処理、サウジアラビアの政情不安、ベネズエラの経済危機、リオ五輪後のブラジル経済、ロシアとウクライナの紛争再発、スコットランド独立、イタリアの金融危機、ISによる世界各国でのテロなど材料には事欠きません。日本も例外ではなく、首都直下型地震、東海・東南海・南海の連動巨大地震、中央構造線に沿って四国から関西にかけての群発地震(過去には慶長伊予地震と慶長伏見地震が発生)やスーパー台風直撃といった自然天災に加えて、日本も国際テロ組織のターゲットとなる可能性も高まりつつあります。

 こういった発生確率は低いものの発生時の影響が甚大なイベント(ファットテール・イベント)を軽視していると、企業は存続を脅かされ、個人は身の安全が図れず、投資に関してもコツコツ稼いだ利益を吹き飛ばしてしまう可能性があります。さらに言えば、それぞれ一つ一つの発生確率が低くても、仮に30個の独立した事象の1年以内の発生確率が1%づつなら3割の確率で大きなショックがやってくることになります。

 その意味で、せめて何かの注意喚起を目にした時に、「ちっ、また上から目線の警告かぁ」と嘆くのではなく、具体的にどういったリスクがあるのか、何をしておかないと危ないのか、また投資で損失を回避できる方法は何かを自ら考えてみることがファットテールイベントへの備えにつながると思われます。例えば、前述の尖閣諸島をめぐる日中武力衝突について考えるなら、「反日暴動に巻き込まれたり、スパイ容疑で拘束される恐れがあるので、中国への不要不急な旅行は控える」、「中国依存度が高い日本企業は、現地での打ち壊し、売掛金を回収できない、物品が税関で差し止められることで業績悪化がありえるので投資ポジションを減らす」、「レアアースの供給が再び止まり、供給不足になる部品は何か調べておく」、「紛争発生直後に逆行高となりそうな日米欧の軍事関連株のリストを作っておく」、「日本国内の主要企業や官公庁への中国人ハッカーの攻撃が激化しそうなのでサイバー関連株に投資する」、「中国株と日本株は急落する可能性があるので、ポジションを減らすか日経平均プットやハンセン指数プットでリスクヘッジを考える」といったものになるでしょう。

(念のため付言しますと、上記は筆者の個人的な見解であり、eワラント証券の見解ではありません。)
eワラント証券 チーフ・オペレーティング・オフィサー 土居 雅紹 (どい まさつぐ)